メンバー
佐々木 真理子(准教授)
学歴
1997年 山口県立宇部高等学校普通科 卒業
1997–2001年 大阪大学工学部応用生物工学科 卒業 学士(工学)
指導教員:室岡義勝教授
2001–2004年 大阪大学大学院工学研究科応用生物工学専攻博士課程前記 修了 修士(工学)
指導教員:室岡義勝教授
2004–2012年 Weill Cornell Graduate School of Medical Sciences, Molecular Biology Program 修了 Ph.D.(分子生物学)
指導教員:Prof. Scott Keeney (Memorial Sloan Kettering Cancer Center)
職歴
2012–2015年 国立遺伝学研究所 細胞遺伝研究室 日本学術振興会特別研究員(PD)
2015-2018年 東京大学 分子細胞生物学研究所 ゲノム再生研究分野 助教
2018-2022年 東京大学 定量生命科学研究所 ゲノム再生研究分野 助教
2022-2023年 東京大学 定量生命科学研究所 ゲノム再生研究分野 講師
2023–現在 国立遺伝学研究所 新分野創造センター 遺伝子量生物学研究室 准教授
これまでの研究にまつわる話
大阪大学工学部応用生物工学科と同大学大学院修士課程では、室岡義勝研究室で研究を行いました。修士過程を修了したら企業に就職しようと思っていましたが、就職活動を始める前に留学してみたいと思い、交換留学制度を利用して米国シアトルにあるUniversity of Washingtonに1年間留学しました。Raymond Monnat教授の研究室で、早老症であるウェルナー症候群の原因遺伝子の機能解析を行い、生物が健常に生きるためにはゲノム情報を安定に維持することが重要であることを学びました。また、ボス、ポスドク、先輩の学生などとも立場の違いなく議論を重ねるという環境がとても自分には合っており、そういうコミュニケーションの取り方を通して研究のやりがいを感じるようになり、博士課程に進もうと思いました。
アメリカにはゲノム安定性維持に関する研究を行っている世界的に有名な研究者が多くいましたし、アメリカの博士課程の学生は学費免除だけでなく生活費支援も受けることができるということから、アメリカの大学院に進むことにしました。とはいいながらも簡単に入れるわけではなく、15校くらいに願書を出しほとんど不合格でした(涙)が、第一希望だったWeill Cornell Graduate School of Medical Sciencesに合格することができました。
Weill Cornell Graduate School of Medical Sciencesは、Cornell Universityの医学部とMemorial Sloan Kettering Cancer Centerの研究所が共同で提供しているPh.D. programです。Memorial Sloan Kettering Cancer Centerは世界的に有名ながんセンターで、病院と研究所が設置されており、最先端のがん治療だけでなく、世界トップレベルの研究が行われています。私はScott Keeney教授の研究室で博士研究を行いました。卵子や精子を作る生殖細胞では、ゲノムDNAにわざとDNA二本鎖切断損傷を導入して組換えを誘導しゲノムの多様性を生み出しますが、このDNA二本鎖切断損傷はゲノム上のランダムな場所に入るわけではありません。そこで、その分布を司る制御機構について研究しました。Scott Keeney教授は非常に聡明でサイエンスについてはとても厳しく、一つ一つの実験を正しいやり方で行うことや既存のモデルに惑わされるのではなく結果に真摯に向き合うことの大切さを教わりました。
卒業後は、日本に帰国し、2012–2015年まで国立遺伝学研究所の小林武彦教授の研究室で学振PDとして研究を行い、その後は東京大学定量生命科学研究所に異動し小林研で研究を続けました。小林研では、出芽酵母のリボソームRNA遺伝子(rDNA)反復領域を用いて、rDNAコピー数変化機構について研究をしました。この領域からは、環状のrDNAも作られることから、独立後の研究の土台をつくる研究を行うことができました。
2023年4月から、国立遺伝学研究所新分野創造センターのテニュアトラック准教授として、自分の研究室を発足させることができました。これからは、真核生物の線状の染色体上で起こるDNAコピー数変化についてだけでなく、直鎖状の染色体から飛び出して環状化した環状DNAの生成機構(特にがん細胞でみられる巨大な環状DNA)と細胞機能に与える影響について研究していきたいと思います。
プライベートについては、私の夫も研究者で、うちには保育園に通う男児が2人います。研究者夫婦が研究を行うにはいろんな選択肢があると思いますが、私は学振PD時代は静岡県浜松市に暮らしながら新幹線で遺伝研に通勤、職場が東大に移ってからは1年間だけ浜松から東京まで新幹線通勤し、今は東京から三島まで新幹線通勤することで家族と一緒に暮らしながら研究を続けています。平日の家事育児は夫にカバーしてもらっています。また子供が小さいと急なお迎えやなんだかんだラボにいる時間が短くなることもあるのですが、ラボメンバーに助けてもらっています。こんな感じで回りの方々にサポートしてもらいながら、研究生活と家族との生活を両立していきたいと思っています。